Dear Liz
森の向こうに流星が墜ちた
藍い夜の畔、静かな灰が降る
緩やかな丘から入り江に向かって曵かれた轢削の先
黒く焼け焦げたトラス、捻じ曲がった鉄骨が風に鳴る
あの星のどこかから還って来た機体
試料カプセルを放出して後、どんな偶然か燃え尽きることなく
この湖に降りて来たのだ
設計寿命を越えて尚、故郷を目指し噴射を続けたイオン・エンジン
生まれた星を探し続けたアンテナも、今は鈍色の躯と区別がつかない
スタートラッカもビーコンもとうに機能を失い、カプセルが回収されれば
探されることもなく、いつかここで雨に射たれ、何も言わず朽ちて行くだけ
それでも、40億kmを越えて、この探査機は還って来た
誰も知らない頂きの曙光が、傾いだフレームを照らす
水辺へ伸びる影の先に、朝露の雫が落ちる
鳥の声が聞こえた気がした
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント