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2006.05.29

LOOSER

友人が家業を諦めるという.東京や札幌でOLをしていたが,実家の商売を継ぐと田舎に帰り,女手一つで洋品店を切り盛りして来たが限界を感じるようになったと.世界は違えど自分の周りでも似たような声を聞く事がある.

こういう仕事をしていると色んな人に会うが,ミュージシャンであれ俳優であれ文化人であれ,媒体に登場するのは殆ど全て勝ち組だ.

小さな街でバンドを組み,夢を目指して歌を作り,やがて都会に出て自主制作CDをリリースしたところ大評判,それがどっか偉い人の眼に留まり見事メジャーデビュー.素敵な話だが,そんなストーリーを語れるのは,針の穴のような確率をくぐり辿り着いたごく一部の人達でしかない.

高校野球の優勝校の裏には数多くの敗戦校がある訳だが,新聞にトーナメント表が載るだけまだいい.色々頑張ってみたけど,メジャーデビュー出来ませんでした.アーティストになるのは諦めます.誰もそんなインタビューは聞きたくない.現状のメディア構造には負け組のゲスト枠なんて無いのだ.

才能が無かった,努力が,忍耐が足りなかった,仲間や観客や,支援者をたぐり寄せる縁が無かった.理由は色々あるけれど,それらは全て自分の責任だ,環境や運を理由にする奴も居るが,100%いい訳に過ぎない.他所と較べる事は意味が無いし,はじめるのも辞めるのも自分の決断だしね.

ただ前述のように,ヒーローインタビューのような報道ばかりが繰り返されるお陰で,みんな安易に目標を持ち,たいした努力もせずアーティストを目指す事が増えたように思う.以前どっかで書いたが,希望に向かって行動する者を,無闇に端から否定出来ない倫理観,夢を応援する社会通念,その傘の下で自己顕示欲とプライドだけが肥大し,チューニングもろくに出来ないのに狸小路で弾き語りをしている者も何人か居る.夢は随分と気軽なアイテムになった.

人前に出る才覚があるのか,努力を続ける意義があるのか,自分自身にリテラシーを持って,シビアに判断するべき事だが,学校も家族もそこまで面倒をみちゃくれない.何れにせよ遅かれ早かれ決断の時は来る.早く見切りをつけた方が傷は浅いが,才能があれば未練は多い.

そして今夜も誰かが,誰にも認められず,部屋の蛍光灯を消しひっそりと夢を諦める.それでもやがて朝が来て.日々は過ぎて行くのだ.

応援するのも説得するのも簡単だ.でも本当の夢や辛さは本人でなくちゃ分からない.ただ自分で決めた事は強く,尊いと思う.そこに伝えるべき美しさがあるような気がするが,どうやって取り上げたらいいのかまだ分からない.

自分と夢の限界を見切る,寂しい事だが,それが大人になると言う事なのかもしれない.

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